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マルの事 その⑨ とうとう我が家にやってきた。 後編

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店を出てずんずん歩いていると

マルがニャーニャー鳴き出した。

初めてのキャリーケース、
とても狭い空間な上に
揺れるし、初めての外の音や空気にとても不安になったらしく

猫の鳴き声を聞き分けられない私でさえ
それが不安を感じている鳴き声な事くらいすぐに分かった。

最初はバスに乗って帰るつもりだったが
あまりに鳴くので歩いて帰るしかなかった。

およそ30分。

取っ手を持ち、鞄を持つように運んでいたが
出来るだけキャリーケースが揺れないように両腕でしっかりと抱え込むように持ち直し、
何度も『マル、大丈夫だよ~』と声をかけるも
一向に鳴きやむ気配なし。

今マルはほとんど鳴かない。
スコは鳴かないと聞いていたけれど
本当に鳴かない。
活字にはしにくい『ミャ』みたいな小さな声を時々発する。
突然『ニャー』っと鳴くと『何?猫みたいな声出して。』と言ってしまうくらいだ。

そんなマルがありったけの力を振り絞り
ニャーニャー鳴いている。

まるで自分が動物虐待をしている人になったみたいで
オロオロしてしまった。

ふと見ると
マルが口から泡を吹きながら
ニャーニャー鳴いている。
ぼたぼたと泡を落としながら
『助けて』と恐怖と不安の叫び声を上げ続けているのだ。

私はマルにこんな辛い思いをさせてしまって
急に悲しくなった。
マルを助けた英雄気取りでいたが
マルが『助けて』と叫ぶ姿を見て
マルを連れだしたことが大きな間違いだったんではないかと不安になり
泣きたくなった。

それでも絶対にあの場所は動物のいる場所では無いと確信していたので
マルの叫び声が聞こえないふりを一生懸命して
『マル、大丈夫だよ~』と言って泣きたいのをこらえて歩いた。

家に着くころには
(一生分の鳴き声を出してしまったんじゃないかというくらい鳴いた後で)
マルは疲れ切ってしまったらしく
キャリーケースの中にしいてあったクッションの下に潜り込んで
びくともしなくなった。

『し・・・死んで無いよね・・・。しょ・・・ショック死してないよね・・・。』

そんな事、あるはずない事を考えてしまうくらい
私はオロオロしていたのだ。

育児書には
猫を迎え入れた初日は
あまり猫にかまわず、そっと見守るようにしてやりましょう、と書いてあった。

神経質な猫の場合キャリーケースから出てこないこともあるが
自分から出てくるまではほっといてあげましょう、とも書いてあった。


マルを部屋に運んで床においても
クッションの下に身を潜めて動こうとしない。
『きっと怖かったから暫く出てこないだろうな。』と少ししょげていた私。

パチン、とケースの蓋を開け
3歩下がってみると・・・。





ゴソッ・・・・・。




ゴソゴソ・・・・・・・・・。




ヒョコッ!!



『もう、着いたんで?』




そう言わんばかりに

マルはすぐに出てきた。



マルにとっては広い
初めての空間。

おっかなびっくり
ビクビクしながらではあるが
部屋を探検し始めた。
いちいちクンクンと匂いを嗅ぎながら
何かを確かめている。


その姿を見ただけで
私は泣いた。

自分でもよくわからなかったが
泣いた。












そんな個人的に大感動なシーンが次の瞬間
マルの手、ならぬ足によって見事に崩される。




蓋の閉まったキャリーケースの上に乗り、
その横のベットの縁に両前足をかけると
ぐっとその前足の力で身体を引きよせ
後ろ足を『どっこいしょ』とベットの縁にかけて登ろうとしたのだ!!!



『飛び乗れへんのかい!!!!!』



と突っ込んでしまった。




マルのいた部屋は50センチ四方くらいの狭い部屋だったので
走る、飛ぶといったアクロバティックな事が一切出来ず、
猫の身体能力を8か月も発揮せずにいたので
マルは自分が走れることも飛ぶことも知らずにいた。


一瞬あまりの間抜けな後ろ姿に立ちくらみがしたが

とにかく

とうとうマルは我が家にやってきたのだ!





つづく・・・・・・


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by kohmebuki | 2011-12-13 09:58 | マル
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